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『荒野の古本屋』

バンビオ店の本棚から

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『荒野の古本屋』 (森岡督行/晶文社)

 

森岡書店に初めて行ったのはいつだったか。大昔のような気もするし、つい最近のような気もする。レトロなビルの薄暗い階段を上がった一室。まるで何年も時間が止まっていたかのような静かな空間。けれどついさっき並べられたばかりのようにボソっとたたずむ本たち。なんだかふわふわした不思議なお店だった。

そんな森岡書店の店主が半生をつづった一冊が出版された。神保町の一誠堂書店で修業を積み、独立し都会のど真ん中の荒野で古本屋を開いた著者。歴史ある書店で働きながら、過去からやってきた資料にふれる彼の半生は不思議な時間が流れている。図書館で集めた古い資料から戦争前夜の日本を体験したり、古書店での業務を通して過去にさかのぼったり。一冊の古書や一軒の古いビルから時間を飛び越えて過去を見つめる。その知識と想像力に驚かされる。誰もが真似できる生き方ではないけれど、なにかしら感じずにはいられない。

本書は「就職しないで生きるには 21」シリーズの一冊。1980年代に刊行されていた同名のシリーズには、『ぼくは本屋のおやじさん』(早川義夫)をはじめとした魅力的なタイトルが並ぶ。時代の主流からはちょっと離れた生き方を取り上げ、自らの言葉で紹介するというスタンスはそのままに、現代の日本でちょっと外れた生き方を選んだ人物たちが一冊ずつ執筆する。ドロリとしたカバー絵とさらりとした手触りのカバーも濃い雰囲気を醸す。今後の執筆陣にも期待したいシリーズだ。

 

 

(鳥居)