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よう知らんけど、『よう知らんけど日記』。

バンビオ店の本棚から

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 『よう知らんけど日記』(柴崎友香京阪神エルマガジン社

 

人の日記を盗み見るのは楽しい。そこに自分のことが書いてあればなお楽しい。ちょっと悪いことしてるという快感。 

本書は、小説家・柴崎友香の日常をなんとなく切り抜いた日記帳である。テレビ見たとか。ほんでどやったとか。風邪ひいたとか。薬が効かへんとか。ロールケーキ食べたとか。クリーム多かったとか。熱いとか寒いとか。そんな些細な日常が何も飾らずに描かれる。そんな中でも、というべきか、やっぱり、というべきか、興味を惹かれるのは、自分の日常とつながる部分である。 

たとえば「ニューヨークに行くのに何着て行ったらええかわからん。」と、いくら関西弁で語られたとしても、ニューヨークに行かない人間としては、『にっぽん縦断 こころ旅』の火野正平のチャーミングさを語られた方がしっくりくるのである。共感できることがうれしいのかもしれない。遠い世界の存在であるはずの小説家が「今日は一日中寝てた。」と書くことに安心感を覚え、やっぱり関西ええわあと語ることにほっとするのだ。 

日記はひとり言のようなものだ、と著者はあとがきで言う。誰に向けるでもない言葉。そこには、ただの真実がある。ウソついてへんな、という安心がある。だからこそ共感できるのだ。そして共感は読者が勝手に見つけるものだ。読む人が、読む人の都合で向き合える本。つまり本書は、すべての人の心のよりどころとなりうる一冊なのである。よう知らんけど。 

 

 

(鳥居)