『それでも私は憎まない』パレスチナ人医師の手記

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(イゼルディン・アブエライシュ著 亜紀書房)

 

2014年7月イスラエル軍によるガザ侵攻再開、8月26日停戦協定締結。
今も世界の何処かで戦争が起こっている。日本に住んでいるとつい忘れてしまいそうな事実を、ニュースを通じてまのあたりにした。

ガザに住みながら、イスラエルで働くパレスチナ人医師のイゼルディン・アブエライシュ氏は2009年の爆撃で3人の娘を失った。たとえ娘を殺した戦闘員を憎んだとしても、イスラエル人を憎むことは根本的に違うことだと彼はいう。怒りを一般化してはいけない。
パレスチナの問題は根深い、住人の多くは生まれた時から度重なる爆撃に怯えて暮らしてきた。イスラエル側の人々も同じくパレスチナ政府によるロケット弾の攻撃に晒されてきた。2つの地域は物理的にも高い壁に隔てられている。
そんな2つの民族が共存することは可能なのだろうかと考えると絶望的な気持ちになる。しかし、果たして本当にそうだろうか、パレスチナとイスラエルの間を行き来し、両方に信頼のおける友人を持つ彼の言葉を読んでいると、共存の可能性に希望を感じる。完全に断絶されているかのように見える両者の間にも少なからず交流がある。
領土問題や民族対立は政治を担っている権力者たちによって行われていることでしかないのではないか。市民のレベルに立って見ると、どちらの国の人々もただ平和な暮らしを望んでいるということが見えてくる。

ガザで活動するNGOで働く小林和香子さんの著書『ガザの八百屋は今日もからっぽ』にも、ガザ地区の住人を心配するイスラエルの人々の姿が描かれている。
イギリスで活躍するグラフィティーアーティスト、バンクシーによる、分離壁に穴をあけるプロジェクトも必見。壁の向こう側を想像することから始めることが大切なのかもしれない。

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バンクシーの作品集も含め、パレスチナ関連の本を少し、まとめて置いています。歴史だとか宗教だとか、難しいことはとりあえずおいておいて、手に取ってもらえればと思います。

 

(濱田)