絵本『ちょうちょ』

f:id:keibunshabanbio:20140330012201j:plain

この絵本とはじめて出会ったとき、表紙一面の黄色に、エリックカールの切り絵を思わせる質感のある鮮やかで大きな蝶羽根が目に飛び込んできたのを思い出します。そこに教科書で見かけるような落ち着いた黒字の明朝体が居心地よくのり、大胆に象られた表紙の蝶にもう一度目を落とすのでした。

 

頁をめくるごとに広がるのは、松田奈那子さんの色がはじけ踊る圧倒的な絵の世界。あるときは水気たっぷりに瑞々しく、またあるときは彫り画のように力強く、一枚一枚頁をめくる度に絵はしりとりをしながら続いてゆき、曲線と直線を、大と小を、色の明彩度を緩急自在に行き交います。その絵の奏でるリズムに読者は最後まで魅了されるばかり。そこに江國香織さんの言葉が加わり、蝶は絵本を優雅に舞い「おんなのこのかみのたば」にとまったり、「あたたかくてやわらかいねこのあたま」にとまったり、とてもごきげんに「せかいをあそびつくす」のです。

 

只今『ちょうちょ』絵本原画展にてご紹介中となります絵本になる前の原作品(月刊誌MOE2013年3月号掲載)をこの度あわせみると、松田さんの絵は江國さんの詩情溢れる言葉を受け、より一層イキイキとした世界観を持ち、力を帯びてみえるから不思議。絵と言葉のハーモニーのよさがうかがえます。またその魅力が存分に輝く絵本が誕生したその裏に、先日「第45回講談社出版文化賞ブックデザイン賞」を受賞なさった名久井直子さんのデザイン力の素晴らしさを感じにはいられません。

 

絵本原画、絵本の原作品、そして完成した絵本を一度にお楽しみいただける当店の展示は今月30日まで。目前に控えたGW前半に、素敵な絵本に会いにぜひお出かけください。皆さまのご来店を心よりお待ちしています。


■絵本『ちょうちょ』

松田奈那子 絵・江國香織  文 /白泉社

松田奈那子さんが2012年に第一回白泉社MOE絵本グランプリを受賞した作品「ちょうちょ ちょうちょ どこにとまった?」に、江國香織さんと名久井直子さんの言葉とデザインが加わり、2013年9月に白泉社より絵本出版化。審査の際には、松田さんのずば抜けた色彩感覚に満場一致だったという。

 

===

『ちょうちょ』絵本原画展

会期 :4/4(金)~4/30(水)(最終日は17時まで) 無休

場所 :恵文社バンビオ店

展示作品: 『ちょうちょ』松田奈那子 絵・江國香織 文/ 白泉社 刊

植物の出店: 旅と豆と水

展示の様子はこちら 
  ===

 

 

 ( 林 )