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村上春樹 『パン屋再襲撃』

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『パン屋再襲撃』(村上春樹/文春文庫)

 

村上春樹の短編、と言えば「パン屋再襲撃」を真っ先に思いつく。

夜中にかつてないほどの空腹に襲われた夫婦。過去に夫が実行したパン屋の襲撃の呪いを解くため、二人は真夜中の街へとトヨタ・カローラを走らせる。短い展開の中に緩急をつけたストーリー。前半、夫の過去を回想するシリアスで重々しい展開から一転して、終盤はなぜか妻が散弾銃を所有していたり、パン屋を探していたはずがハンバーガーショップに入ってしまったりとコントのように話は転がり始める。店員に対して妻が言い放つ、「ビッグマックを三十個、テイクアウトで」というセリフで何度読んでも爆笑してしまう。

「我々は実際には何ひとつとして選択していない」とか「成功したとも言えるし、成功しなかったとも言える、過去の呪い」や「洋上のボートから見下ろす海底火山のイメージ」といったちょっとややこしい部分は置いておいて、単純に笑える作品だと思う。

村上春樹の作品といえば、謎の双子に振り回されたり、不思議な路地に迷い込んだり、とにかく難解でとっつきにくいという先入観を持っている人も多いかもしれない。実際ぼくもそうだ。長編作品を前にするとちょっと肩に力が入ってしまう。新作が出るたびに発売前から大きな話題になったりさまざまな解釈が乱れ飛んだり。だが、肩ひじ張らずに触れてみれば、そんな雑音を吹き飛ばしてしまう世界に入っていける。近々届くという次回作は、村上春樹の入り口となるかどうか。

 

 

(鳥居)