『わたし、解体はじめました』

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『わたし、解体はじめました』(畠山千春/木楽舎)

 

ポップでカラフルなカバー絵とタイトルの「解体」という言葉の激しいギャップに引かれ思わず手に取ってしまった。

著者は20代の女の子。彼女がなぜ狩猟の世界に踏み込むことになったのか、生き物の命を自ら奪い、そしてそれを食べる生活を始めたのはなぜなのか。「死とはなにか」「生きるとはなにか」「食べるとはどういうことか」といった決して軽々しくない問いを投げかける。

野生の生き物を狩り、解体して食べる生活を、著者は「身の丈に合った生き方」と述べる。必要なものを必要な分だけいただく。その考え方は理解も共感もできる。だが、何もそこまで・・・と立ち止まってしまう人がほとんどではないだろうか。

たとえばヒヨコからともに生活し、育てた烏骨鶏を自らの手で絞めるエピソードには言葉を失う。「涙が溢れてきました。」という軽々しい言葉だけでは伝わってこない、経験したものにしかわからない感覚があるのだろう。

スーパーや精肉店に並ぶパックに入った数々の肉も、元は生きた動物でどこかで誰かに命を絶たれ、解体され、そして私たちのもとへ届いている。そんな事実を、ほとんどの人は頭では分かっていても積極的に見ようとはしない。それを実践し、写真をブログで公開し、かわいい一冊の本にしてしまう。いいことなのかよくないことなのかはよくわからないが、答えの出ない大きな問いを投げかける一冊だ。

 

 

(鳥居)