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「筒井商店」的な生き方 『はじめてのおつかい』

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『はじめてのおつかい』(林明子/福音館書店)

 

「みいちゃん、ひとりでおつかいできるかしら」

「ひとりで!」

ある日、忙しいままに言いつかったはじめてのおつかい。ひゃくえんだまを握りしめて、みいちゃんが向かうのは坂のうえにある小さなお店です。ともだちのともちゃんに会うと鼻高々。転んでもへっちゃら。はたしてみいちゃんは無事ぎゅうにゅうを買ってくることができるの?

本書は昭和51年3月に「月刊 こどものとも」の4月号として刊行された。作中に出てくる「筒井商店」のような、牛乳もあり、たばこもあり、パンもまんじゅうもおかしも赤電話もならぶ、街角の小さなお店は今ではもう見かけることはない。いま、はじめてのおつかいに選ばれるのはコンビニやスーパーだろう。そして、かつてそこで営まれていた小さな商いや、交わされていた何でもない会話も一緒になって失われてしまった。

『小商いのすすめ』(平川克美/ミシマ社)や『Spectator 27号』(エディトリアルデパートメント)の小商い特集、また最近では姉妹店である一乗寺店店長が手がけた『街を変える小さな店』(堀部篤史/京阪神エルマガジン社)などで注目される「小商い」という考え方は、まさにこの「筒井商店」的な経済を指している。近所の子どもやおじさん、おばさんが立ち寄り、買い物をしてちょっと世間話をして帰っていく小さなお店。そんな商いを見直していこうという考え方の裏には、これからの国家や経済とはなにか、豊かさとはなにかという大きな問いがある。

40年近く前に世に出た絵本から、現代の生き方を考える、というのはすこし大げさだろうか。

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(鳥居)