おじさんの真実 『おじさん追跡日記』

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 『おじさん追跡日記』(なかむらるみ/文藝春秋

 

前作『おじさん図鑑』(小学館)ではひたすらおじさんを観察し続けた著者のなかむらるみさん。今回は一歩も二歩も踏み込み、インタビューを敢行。のはずが、仕事場を訪問し、自宅に遊びにいき、お墓の前で記念撮影してみたり、居酒屋で一杯やってみたり。いったいどんな流れでそうなるのかまったくわからないが、とにかくディープなおじさんたちの世界にどっぷりはまっているようだ。

本書に登場するのは、「柏の珍プレーおじさん」吉田さん、「暴れん坊のおじさん」河島さん、「政治家のおじさん」石破さん、そして「女装が趣味のおじさん」マロンちゃんといった気になる方々ばかり。街にひとりは必ずいるし、誰もが気にはしているけれど、とくにこれといった話題にはならないおじさんたちの真実に迫る。

本書に登場する「お寺のおじさん」森本さんは、子ども好きなお寺の住職さん。作務衣のズボンにワイシャツ姿で、街で見かけるとやはりちょっと気になる風貌だ。しかし話を聞いてみれば、モットーは「いつもにこにこ」、好きな女性のタイプは、「あんまり分からないけど昔だと原節子」。ごくごく普通のおじさんなのである。ただ、好物はなぜか「しけったおせんべい」。ちょっとした謎は残しつつ人間味あふれる姿を見せてくれる。

そういえば僕のまわりにも、長岡京駅が神足駅と呼ばれていたころからある不思議な外観の喫茶店のマスターのおじさんや、古本市に出現し誰よりも古本を堪能しておられたりっぱなヒゲのおじさん、通勤のバスでいつも一緒になるあのおじさん、そしていつもお店に来てくれるあのおじさんこのおじさん。世の中には気になるおじさんがあふれている。

思い切って話しかけてみれば、あなたの身の回りのおじさんの謎もちょっとだけ解決するのかもしれない。

 

 

(鳥居)