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職人さんたちの横顔 『京職人ブルース』

バンビオ店の本棚から

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『京職人ブルース』(米原有二・堀道広/京阪神エルマガジン社) 

 

300人以上の職人さんに取材をし、その技や生き方を描いた一冊。

日常生活で出会うことがないためか、「職人」と聞くと、無口で頑固で恐い白髪の親父のイメージが頭をよぎる。工房に籠ってひたすら自分の技と向き合い続けるストイックな姿が目に浮かぶようだ。実際お会いしたことはないが。

また、「職人」とセットでよく聞く言葉が、「後継者不足」。京都だけでなく日本中で、職人さんが途絶えてしまい、伝統産業そのものが過去のものとなってしまったという話はほんとうに多い。ただ一人、伝承された技を守り続ける孤独な職人。人を寄せ付けぬオーラを感じる。一度もお会いしたことはないのだが。

そんな勝手な想像に反して、本書に登場する職人さんたちのエピソードはみんな、とてつもなく人間味に溢れている。

香割り職人は、作業の途中ででる香木の細かい破片を市販のジップロックに集めていたとか。指物師が木釘を作る際に使用するフライパンはちゃっかりテフロン加工されているとか。印章師は、スタンプラリーについては全然詳しくないとか。

まじめな取材の中に突然登場する超庶民的な感覚やアイテムに意表をつかれる。職人とはいっても雲の上の存在などではなく、ただ真摯にものづくりにはげむ、近所に住んでいるおちゃめなおっちゃんなのだった。

僕たちは職人という職業を遠いものにしすぎていたのかもしれない。職人はもっと日常的にわたしたちの近くにいるのかもしれない。もしかしたら毎朝すれ違うあの人も、居酒屋で隣に座ったあの人も、なんでもない雑誌を買っていったあの人も。

そんな日常の風景を切り取れるのも、足しげく職人さんのもとに通い、丹念に取材した筆者だからこそ。なんだか職人さんに会ってたわいもない話を聞きたくなる一冊である。

 

 

(鳥居)