読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ビジネス書の棚から 『就職しないで生きるには』

バンビオ店の本棚から

f:id:keibunshabanbio:20130707181853j:plain

『就職しないで生きるには』(レイモンド・マンゴー/晶文社

 

当店のビジネス書の本棚から、1970年代のアメリカで書かれ、今なお読み継がれるロングセラーをご紹介します。
初版が発行されたのは1979年。日本では1981年に翻訳され、刊行されました。著者のレイモンド・マンゴーは、1960年代アメリカのカウンターカルチャーの影響を色濃く受け、ベトナム反戦運動などに参加し、社会に縛られない、常識にとらわれないことを第一にした人でした。彼がこの本を書いた時代が必ずしも現代の日本と同じわけではありませんが、彼らの思想には、多少なりとも現代に通じるようなものがあるのではないでしょうか。

まずタイトルからいろいろな内容を想像してしまう本です。原題は、“COSMIC PROFIT―How to make money without doing time”。そのまま日本語にするならば、「根源的利益―服役することなく金を儲ける方法」。「服役」は「縛られない、束縛されない」といった程度の意味になるでしょうか。つまり、自分らしく何物にもしばられずに、生きていくためのお金を手に入れる方法を書いた本です。
とはいっても、本書で描かれるのは、「働かずに収入を得るには」といった方法論ではありません。「就職しない」というのは「働かない」という意味ではありません。事実、この本に出てくる人たちはみんな寝る間を惜しんで働きます。「働かされる」ということを拒否し、理想をもったまま生きていくにはどうしたらいいかを書いた本であり、それを実践した人たちの記録なのです。
本書では、マンゴーとその友人たちがかつて経験した、本屋の立ち上げ、出版、広告会社の経営など、数々の成功と失敗が描かれます。単なるサクセスストーリーではなく、納品した本の支払いがされなかったり、クレジットカードでの買い物で失敗したり、借金を抱え家賃を滞納したり、電気ガスが止められたりといった事実を正直に綴ります。

そして最後にマンゴーはこう述べます。

 

 根源的な、つまり、ほんものの、利益とは、だから、ひどく非現実的で、かたちの定まらぬ、想像的なものだ。そしてそれは店では売っていない。

 

この本のなかで起こったことをそのまま実践したところで、現代の日本では生きていくことはできないかもしれません。結局のところ、著者が教えてくれるのは、彼ら自身に起こったことだけです。それはヒントにはなりえますが、答えではありません。あとは私たちが自分で考えるしかないのです。
成功の法則や、大金持ちがやっている習慣などといった「答え」(のようなもの)が書かれるビジネス書を読む前に、まず本書を手にとり、そもそも生きるとはなにか、働くとはなにかを考えてみてはいかがでしょうか。


(鳥居)